∞の庵

5人しかいないけれど、5人がいる

虚構の世界が消えた今、輝くのはうつつの光

月曜日の午後に千秋楽を迎えた「ジレッタ」。
友人がこの日を当ててくれたことで
「月曜日に有休をとって
横山裕の主演舞台の千秋楽を観に行く」という
最高の贅沢を味わえた。

2日経った現在もまだ脳内で門前が歌い踊っているが
中でも最後のシーンとなる、世界の終わりなのか
妄想世界なのかに飲み込まれて行く門前の
手を伸ばして助けを求める姿が焼き付いて離れない。

自分の天才的思考に自信あふれる門前。
チエちゃんや山辺の才能や能力に乗っかりながらも
世間をアッと言わせたいという子供のような純粋な思いに
二人もどこか憎めず離れられずにいたのかもしれない。
うまく世の中を回しているつもりがいつしか利用され
大きくなるために捨てたはずの女性にしか本音が言えず
彼女に認められたいがためにあがき続ける。

結局は良くも悪くも妄想世界にハマることは現実逃避で
自分にとっても都合がいいが
現実こそが複雑で深い世界なのだと気付かされる。
斬新で刺激的な世界へ飛び込む快感に溺れると
そこから出られなくなり現実に戻れない。

栄光と挫折の両極端な姿でもあるが
それが1幕最後の金色の紙吹雪の中で堂々と立つ門前と
最後に妄想の暗闇に飲み込まれて行く門前の
美しい姿で表現されていたように思う。
その舞台らしい見せ方が印象に残り
当分その儚さが頭から離れそうにないのだ…

だが、ファンとは恐ろしいものだ。
この平成の世の芸能界にとっても考えさせられるような
ジレッタの興味深い世界に引き込まれているはずなのに
門前が放つ色気あるセリフは一切聞き逃さない。

去ろうとするリエさんに「他の男じゃ満足できないはずだ」と
負け惜しみのような言葉を投げかけたり
ジレッタ中で馬にお医者さんごっこされるリエさんを見て
「俺の女に何をする!」と思わず叫んだりする門前が
一貫して黒スーツであることにハッと我に帰るのだ。

なんという横山裕の美しさだろう。
策士で天才肌なところも実体とかぶ
救いようのない自意識過剰が輪をかけて愛おしい。
なのにチエちゃんが亡くなり茫然自失となる山辺
気持ちを寄り添わせて庇おうとする言動にホッとする。
世界を巻き込み振り回した男は
全く特別ではない、ただの寂しがりやの男だった。

ああ…忘れたくない…
腰を屈めて「ペラペラ」というセリフを言いながら
リエさんに筆記させる門前。
「はい、門前」とだけ言って受話器を取る電話の出方。
チエちゃんのソーキュートなたぬきそばの歌。
歌いながらウィンクしたジミーさんにはしっかりと恋にオチた。

まさに重役出勤と言わせるほどの後半にご登場の竹中直人様は
その自由奔放な演技と存在感で全てをかっさらった。
無邪気なアドリブに吹き出しそうになりながら
対応しているヨコを見せてもらってありがたかった。

千秋楽のカテコでは
この3ヶ月間が自分にとってのジレッタなのではないかと
思うほどだったと感想を言ったヨコ。
それほどにあっという間で夢のような時間だったのだろう。

カンパニー一人一人のお名前を言いながら
最初出だし間違いましたよね?とか
お名前なんでしたっけ?といじりつつ
照れ隠しするヨコが何よりヨコらしくて笑えた。

舞台を見た私たちの心にもジレッタは生き続けると思うので
忘れないでほしい、とも言ったヨコ。
苦手な歌をやってくじけそうにもなったけれど
みんなに助けてもらってやってこれたと感謝しつつ
「ジレッタ最高!」と叫ぶ座長の現実(うつつ)世界は
光り輝いていた。

さて…私もそろそろ現実世界へ戻らねば…


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