∞の庵

5人しかいないけれど、5人がいる

愛に走り親友を裏切る役が美しい

先日ヨコの「絶対零度」の感想を書いたが
忠義さんの「モンテクリスト伯」の感想を
一文も書いていないことを思い出したので
えらくズレているが気にせず書こうと思う。

じつはオンタイムで見ていなかったこともあり
Twitterでもつぶやきにくいし
何回分かまとめてみているうちに終わっていた。

そういえばこのドラマがギャラクシー賞を頂いたそうだ。

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確かに、有名なお話であるにも関わらず
現代の日本に置き換えて連ドラにすることは
大変リスクがあったと思うが
人間の欲望と自分勝手と許しと愛が入りまじり
とても面白かったと思う。

うちの忠義さんは長年キラキラ王子役が多く
いつか人間の欲望丸出しの悪い男や犯人役を
やってほしいと思っていたので
「好きな女を奪い取るために親友をだます」と聞いて
いや、マジで嬉しかった。

本来彼はなんでも優しく受け入れるヒーローではなく
理屈っぽく敏いが割と女々しい男なのだ。(多分)
だからぜひあのマスクでもって
嫉妬と欲望を丸出しにして我を振り返らずに
自分勝手に生きる男を演じて見せてほしかった。

大きなドラマではないが、過去には忠義さんも
「親友を裏切る役」をこなしたことがある。
私の記憶で一番古いのはヨコが主役の「蹴鞠師」で
ヨコの親友だったにもかかわらず実は長年の恨みがあり
大切な試合でけがをしていたはずの忠義さんがよみがえり
ババーンとヨコの前に現れるのだ。

驚きショックを受けたヨコに問いただされて
「ふざけんな!」と吐き捨てた。
人間、意地の悪さは誰にでもある感情だが
忠義さんのそれは美しく鋭く、そして悲しみも加わり
この子にはこうゆう役をどんどんやっていってほしいと
激しく思った覚えがある。

モンクリは小さな漁村で俳優を夢見る様子から始まったが
実際の忠義さんの洗練された美しさは隠せず
取ってつけたかのように「B」とプリントされた洋服が
醸し出すはずの田舎っぽさが中途半端となった気がするが
忠義さんですら着こなせない洋服がある事実は新鮮だった。

それが何がどうなったか俳優として成功し
幸せをすべて手に入れた典型的な男となっていたが
同じように金の力で洗練された幼馴染が目の前に立っても
全く気が付かないとは、そうじゃなきゃ話が進まないにしても
金の力と幸せボケとはなんと恐ろしいものなのだろう。

ましてや親友を陥れたどころか
海外でお世話になっていた家族を事件に巻き込み
自分だけ逃げ帰ってきたとは最低な男にも程がある。
だがつい彼も悪気があるわけではないのだと
庇いたくなるのは、全が計算からではなく
人生の分岐点で自分のことしか考えなかった弱い男を
忠義さんがしっかりと見せていたからなのだ。

そんな男を女が許すはずがないのに
いったんは許されたと思うのも浅はかで
その後自殺を図るも助けられたことも情けなく
なのにすべてを失って生きることに意味が見だせないのか
すっかり開き直ってしまうのも人間臭くていい。

自分が危険に冒されている時に同じように呼び出された
元妻を遠ざけようとして声を荒げた時は
こんな時にまた愛を思い出してしまうなんてと可愛らしくも思えた。

最後、ディーン様ことダンちゃんが
自ら火の海に飲まれそうになると
ユキオが思わず助けに行ったが
あれは親友としての本能だったのだろうと
どこか救われたような気持ちになっていると
顔に包帯まいたユキオが取り調べを受けていて
結局美しい顔をも失ったという結末なのかと
彼の生き様にやたらと納得した。

こんな情けなくも人間味のある男を
演じきった忠義さんは新しい扉を間違いなく開いた。
アイドルの王子枠を突き破っていい仕事を見せてくれた。
その後のユキオはどこかで顔をきれいに直し
愛に執着してドロドロと生きている気すらする。

どうかまた忠義さんに
彼の真髄に触れるほどの男役がきますように。
そして新しい扉がどんどん開き
より彼の美しさが増していきますように。